忍びの学び舎此処に在り 1


新緑が育ち風薫る季節。

とある塀の傍に厳格そうな老人と面を付けた子ども二人がいた。

「…では、行くぞ」

「「(コクリ)」」

老人の掛け声に子ども達が頷き返すと、老人は軽々と塀を登り中に侵入し走り出し、その後ろを子ども達も難なく付いていく。

そして三人はとある庵の所まで来るとすぐに屋根裏に登り室内の様子を窺った。

中にはサラリとした髪の老人が座っていた。

“お前達は此処で待っていなさい”

「「(コクリ)」」

子ども達に待機しているように伝えると、老人は苦無を取り出し、タイミングを見計らって室内にいた老人に襲い掛かった。

「大川平次渦正、覚悟〜!!」

「何奴ッ?!」

部屋にいた老人は屋根裏から降りてきた老人の苦無を手元にあった杖で防ぐ。
『あ、防いだ』
数度打ち合いをした後、両者共に後ろに退き体勢を立て直す。
『おー、流石は元天才忍者ってか』
「ふっ、まだまだ腕は落ちてはおらぬ様だな」
『ってか防げなかったらどうするつもりだったんだろう?』
「……その苦無に付いている印、そなた森羅万蔵か!!」
『ワザとらしく“歳を取ったとはいえ所詮この程度だったのだな”って言うと思う』
自分を狙ってきた暗殺者だと思っていたが、実は古くからの知人だった事に目を開いて驚く。
『“もう少しできると思っておった儂が間違いだったか”とも言いそうだよね』
「やっと気付いたか」
『見た目は頑固爺なのに、タヌキだからタチ悪いよな』
苦無を持つ老人、森羅は構えを解き苦無を懐に直す。
『しかし、ヒマだねー…』
杖を持つ老人、大川もソレを見て構えを解き杖を足元に置く。
『茶でも飲むか』
「大川……」
『せんべい食べたらバレる?』
「森羅……」
『オレ達の存在は多分バレてるとは思うけどな、気配消し切ってないし』
構えを解いたにも関わらず二人の間には緊張した空気が漂っており、騒ぎに駆けつけていた者達も息を呑む。
『今来た人達も全員忍者みたいだしねー。なら、別にバレてもいい?』
そして、二人が、動いた。
『漏れた音がせんべい食ってる音だったら流石に怒られんじゃね?』
「平次ッ、久し振りだなぁ〜ッ!!」
『んじゃ、餅は?』
「万ちゃーんッ、会いたかったよ〜ッ!!」
『それなら大丈夫だろ。俺にも頂戴』
「「「「「「「「「だぁーッ!!」」」」」」」」」
『草餅と豆大福、どっちがいい?』
先ほどの緊張感を無に帰して抱き合い喜ぶ老人二人に周りにいた者達がズッコケた。
『豆』
「「「「「「「「「学園長ーッ!!」」」」」」」」」
『んー、はい』
「「わっはっはっはっは」」
『おう、サンキュー』
教師陣は文句を言おうと詰め寄るが二人はどこ吹く風と笑い合っていた。




仕切り直して、忍術学園の学園長、大川平次渦正は集まった教師陣を後ろに控えさせて、昔の戦友である森羅万蔵に向かい合った。
『あー、草餅美味しい…』
「改めて、久しいな大川」
『豆大福も旨かったぞ』
「うむ、久し振りじゃのぉ森羅。最後に会ったのは……二十年程前じゃったかのぉ」
『マジ?んじゃ豆大福も食べたい‥』
「月日が経つのはいつでも早いものだな」
『いいんじゃねぇ?』
古くからの友人との再会に喜び合う。
『うーん、晩御飯入るかな?』
「して、今日はどうしてココに来たんじゃ?」
『後で適度に身体動かせばいいだろ』
「何、久しく友と会っておらんと気づいてな」
『そだね、んじゃはい草餅』
茶目っ気を含ませて話す友人が変わらない事を笑いながら話を進める。
『ん。‥旨いな』
「それだけの理由でお前さんはココまで来んじゃろがこの出無精が。大方、上に居る者達が理由じゃろうて」
『っとと、何か話コッチにきてる?まだ後半分残ってるのにー』
気配は殆ど感じられないが、天井で待機しているだろう者達の事を匂わせると、森羅はすぐに認めた。
『口に突っ込め、面被ってるからバレねぇだろ』
「やはり気付いておったか。お前達、降りてきなさい」
『降りた後は面を動かさずに食べろよ、行くぞ』
天井に向かって森羅が声を掛けると、子ども達が森羅の後ろに降りてくる。

「ほぅ…子どもじゃったか」

面を被っている為顔は見えないが、体格からしてどう見ても十歳前後だと思われる。

それなのに、気配の消し方や天井から音を立てずに降りれる身体能力に大川及び教師陣は感心する。

「随分と気配を消すのが上手いのぅ」

「儂の教え子じゃからな。そこらの忍者よりよっぽどできるぞ」
『爺バカ…』
本音であろう賞賛に森羅は得意気に答えた。
『いや、オレ達を褒めるフリして自分を自慢してんじゃないか?』
「その子達を自慢しに来たのか?」
『変に負けず嫌いだからね』
あまりに自慢気に答えるので本当にそれだけが理由かとジト目で疑う。
『年寄りは頑固者が多いって言うしな』
「それも理由の一つだが流石にそれだけではない」
『確かに妙な所で意固地になったりするよねー』
「「「「「「「「「(理由の一つではあるんだ…)」」」」」」」」」
『妙にガキっぽくなったりするしな』
森羅の答えに教師陣が心の中で突っ込んだ。
『まぁ、それでも今まであった大人では一番マシだけどね』
「まぁ、少し長い話になるんでな。大川、済まぬが二人を敷地内で自由にさせても構わぬか?」
『まぁな』
「構わんよ、少し奥にある竹藪の前に切ってある竹があるから何か作って遊んでいても良いぞ。

但し、あまりあちこち行くと罠や落とし穴があるから気を付けて遊びなさい」
『気を付けて遊びなさい、だって』
森羅の言葉に大川は快諾し、少しの注意で送り出す。
『取り合えず行こうぜ』
二人の言葉に子ども達は頷き、大人にお辞儀をして外に出て行った。

「……あまり羽目を外さなければ良いが」







rkrn始めました。
と言いつつ出てる殆どがオリキャラと学園長ジジイばっか…(笑)

そして、夢主達超自由にしてるよ…(笑)