初顔合わせ 3(保健委員会)


保健委員会の活動場所である医務室に入ると(珍しく)保健委員全員が揃っていた。

「先輩ー、新しい子連れて来ましたー」
ー、コッチ着いたっぽい?医務室らしい』
                                          『保健委員会だもんね、コッチは倉庫みたい』
「おや伊作、随分早かったね」「それに怪我ないですね」「それどころか汚れもない」
『用具委員会だもんな』
                                          『しかし、カラフル…』
「「「………どんな魔法を使った?」」」
『何色がいる?』
                                          『深緑・群青・紫と連れて来た萌黄』
「先輩達酷い…」
『こっちもだ。各学年集合って感じだな、一年いないけど』

無傷どころか綺麗なままで医務室まで辿り着いた伊作を見て、先輩達は信じれないものを見るかの如く目を見開き驚愕した。

その光景に伊作はがっくりと肩を落とすが、自分の過去を振り返る限り確かにここまで何事もなく辿り着けた事は皆無と言って等しい。

自分の経歴に涙を流すと共に、先輩達に言い返せない程の不運さに余計落ち込んでしまった。

「どうせ僕は不運委員会と呼ばれる保健委員会の中でも一番不運ですよ…皆でいても僕だけ穴に嵌まったりするし、定食は売り切れちゃうし、何もない所で転んだはずなのに罠にまで辿り着いちゃうし…」
『保健委員会って不運なんだって…』
                                          『不運?』
ブツブツと不運体験を言い始めた伊作を見て先輩がヒョイと伊作を抱き上げた。(お陰で手を繋いだままだったの手は上に引っ張られた)

「伊作、いつも言っているだろ。陰気は余計に負を呼ぶ」
『ご飯が売り切れたり罠に嵌ったりと色々な目に遭うみたい』
                                         『それは…不運じゃなくて呪われてるのでは?』
「そうそ、不運を笑い飛ばせるぐらい大物にならないと」
『オレもそっちが正しい気がする…』
「我等は保健委員会、人を癒す者達ですよ」
                                         『コッチは後輩弄りが好きらしいけど、後輩弄りってゆーより留先輩弄りみたい』
「…はいッ!!」
『あの人打てば響きそーだもんな』
                                         『実際ちょー響いてるよ』
頭を撫でながらいつもの言葉を言い聞かせると、伊作は立ち直り元気に返事をして下ろして貰う。

「ん、ならば一先ず新しい子の紹介でもしようか」

委員長の一声で一斉にの方を向き、思わず警戒心を顕わにしすぐに逃げ出せるように構えた。

「大丈夫だよ、皆優しい先輩達だから」

伊作が満面の笑みでに語りかけるとと他の先輩達も微笑みながら頷いた。

「そうですよ、委員会の子には怖い面なんか見せませんよ」

「元々この委員会は仲が良い事で有名だしね」

「変なイチャモン付けられたらすぐに言うんだぞ?8倍返しぐらいにしてやるからな」
『なんか笑顔が超黒いんですけど…』
                                         『コッチはそこまで黒くはないかなー?』
「ね?皆優しくて頼りになる先輩達だから!!」
『俺そっちがよかった…』

色々含みがある言い分を全てスルーして笑う伊作に、は彼が天然なのか腹黒なのか判断が付かなかったが一応自分に害がない事だけは確かなようなので頷いておいた。

「よかった。あ、因みに委員長が泰一先輩で隣が智則先輩と宗義先輩だよ!!」

「伊作、全然紹介になってないぞ」「せめて誰がどれかと学年ぐらい言わないと」「編入生なら学年の色も知らないでしょうし」

「あ、そうでした。が入ったのがつい嬉しくて…」

焦り過ぎて色々抜けてしまった事で顔を赤らめた伊作の頭をポンポン撫でながら、改めて順に自己紹介をしていく。

からはまともな自己紹介が返ってくるとは既に思っていなかった伊作は呼びに行った時の出来事を交えて紹介する。

最後に期待する目で伊作が見てきたのでは渋々名前だけ返す。

「……………二年は組、白檀です」

無愛想なの声色に腹を立てるどころか声が聞けたと喜ばれ、はどう反応すればいいのか分からなかった。

「保健委員会は名の如くこの学園の健康を保つ為の委員会。主に医務室で怪我や病気の者の対応や薬の製造をおこなう」
                                         『訂正、黒くはないけど暑苦しい…』
「つまり保健委員を続けていれば薬の扱いも学べるって訳だ」
『どっちもどっちだな…』

「……不運委員会?」

「そう呼ばれる事もありますが全員がそうだった訳ではありませんし、忍たる者、その運を転じればいいだけの事」

「死ぬ様な目に遭う訳でもなし。不運であっても不幸な訳ではないからな」

「からかい半分で言われても侮辱としてそれを言う奴はいない」「特に上級生では」「言えばどうなるか知っていますからね」

話の所々に黒さが見え隠れしているが一応保健委員会の活動内容を説明して行く。

ある程度説明し終わると上級生は伊作によく使う薬の説明をするよう命じた。
                                         『この上級生達、敵意がある訳ではなさそうだけど』
「伊作は三年間保健委員を務めているから大体の薬は分かっているな?」
『コッチも、言ってる事は本心な様だ』
                                         『でも一番信じれるのはやっぱり三年生みたい』
「はいッッ!!」
『一番分かり易いしなんかすっごく好意的だし』
                                         『まずは三年生を壁にして様子見だねー』
「では頼みますね」「急がなくていい、寧ろゆっくりでいいから薬をひっくり返したりしないようにな」
『先生達にも“自分達で見極めろ”って言われたしな』
                                         『見極めてやろうじゃん?』
「わかってます!!」
『あぁ』


奥で薬の説明をする伊作とそれを聞いている(無表情だが時々頷いてはいる)を視界に入れながら上級生は今後を話し合う。

「二年の編入生、ねぇ…」

「随分とできるようですね」「足音も気配もなかったですよねー」

委員長の呟きに一人は綺麗に微笑み、もう一人は無邪気に笑った。

「あんまり心配は入らないようだが一応まだ下級生、何もないに越した事はないな」

「まー、保健ウチの子に手を出すバカはいないでしょーけどねー」

「分かりませんよ?血迷う能無しの屑は何処にでもいるものです」

「そんな馬鹿はの存在に気付かない事の方が多いだろ」

「存在に気付いて保健委員って気付かなかったら悲惨ですよねー」

あっけらかんと言われた可能性に委員長はポンと手を打った。

「そうか、その可能性はあるな…」

「その時は心置きなく処理してしまえば言いだけの話です」

「「うんうん」」

綺麗に微笑んだ顔と反比例して冷酷な事を言う四年生に頷く五・六年生。

「まぁ、用具に兄弟がいるようだしそっちとも話をしておくか」

「用具も後輩好きですもんねー」

「我々が味方になるなら感涙するでしょうね」

「(……情が制御できない程の恐怖の、の可能性が高いけどな…)」

「アイツ等当てたら楽ですしねー」「それぐらいの役には立つでしょう」

「(ま、いっか)んじゃ、同学年の用具委員見つけたら話し合っとけ」

「「はい」」



「委員長、薬の説明終わりましたー」

「おー、じゃあ次は残り少ない薬を作るか」

「確か3種類ほど少なくなっていたと思います」「伊作も一緒に見学しとこーねー」

「はい」

この後も薬をひっくり返したりすっころんだりドタバタしたが、医務室は陽気な雰囲気が絶えなかった。







すっごく先輩達がでばっとるッッ!!しかも黒い!!伊作の出番がない!!(笑)
これ以上先輩達は―以下略―

と以心伝心中。用具委員会編と繋がってるので見比べたら分かり易いと思います。
面倒な方は反転を。




<捏造委員会及び人物>

保健委員会──学年問わず仲がいい。不運な者が多いが上級生はそれを生かして何かしている様子。
           ニコニコ笑ってえげつないが、委員会の後輩には優しいらしい。

泰一  六年ろ組 一応上級生組では一番常識を持っているが、使用する気はない。なんだかんだと腹黒。
宗義  五年は組 ケラケラ笑いながら無邪気にキツイ事を言う。
智則  四年い組 敬語はデフォルト。一見優男風だが一番黒いし容赦ない。

なんか、全体的に黒い…(笑)