天災は忘れる前にやってくる61


「いらっしぇーい、ご注文は?」

厨房のオッサンの問いに対する答えは一つ。(別のを頼んだ後でも別によかったけどさ)

「ステーキ定食」

オッサンがピクッと反応する。

ぅわ・・・マヂでこの反応なんだ?ちょっと感動。

「焼き方は?」

「ホントは強火でミディアムレアにして欲しいけど、弱火でじっくり」

ステーキをホントに弱火でじっくり焼いたらマズイと思うのはボクだけ?

「・・・あいよー」

「お客さん、奥の部屋にどうぞー」

タイミングよくウェイトレスのお姉さんが案内をしてくれる。

しかし、ココにいるお客さんは奥の部屋に入っていく人が一人も帰ってこない事に疑問を持たないのかな?

中に入ると一人前のステーキ定食(しかもミディアムレア)が用意されてました。ラッキー。

「シロガネ、お待たせ。もう出てきていーよ」

シロガネを呼ぶと、“ふー、やれやれ”とゆー感じで出てきた。

その後は寛いで地面に伏せている。

さて、ステーキに火が通り切る前に食べますか。

ステーキ2・3切れを持ち歩けるように処理した後、残りは美味しく頂いた。

流石ハンター教会、良い肉用意してくれてる。

 

 

 

ゆっくりと食事を楽しみ満足した時にエレベーターはB100に着き、扉が開いた。

シロガネを横に従えてエレベーターから出る。と、一気に視線が集まった。

う・・・やっぱシロガネはマズかった?

猿も蜂も蛇もいーみたいだからいーと思ってたんだけど?

ま、気にしないでおこう。

まめー、じゃなかったマーメンはどこn「どうぞ、番号札です」/・・・

「・・・どうも」

・・・シロガネで見えなかった。

マジちっちゃいな、マメマーメン。

番号は167か。微妙だな。

「ねぇ、君」

ゴン達は400番台だからまだまだだしなぁ。

「ちょっ、ちょっと?!」

キルアはもういるから捜そっかなぁ?

「無視すんじゃねぇ!!」

 

「ガルルルル・・・・」

 

「あ?」

声の方を向くと団子鼻の背が低い男が唸ったシロガネに怯えていた。

ふーん、番号が16番のオッサン、ね。

「すみません、考え事をしてたので。何か?」

マジで胡散臭ぇ顔だよな。

「い、いや・・・こっちこそ邪魔して悪かったよ(だから唸ってる虎を止めてくれッ!!)。ただ君がルーキーみたいだから色々と知りたいんじゃないかなぁと思ってね・・・」

テメェに教わるコトなんてねーよ、と言いたくなるよね。

「そーですか。お気遣いありがとうございます。

でもそんなにすぐにルーキーだって判るモノなんですか?」

「あぁ分かるよ。オレは10歳の時から36回試験を受けてるからね」

自慢のよーに言うのが意味不明。全ッ然自慢になんないよね?

「10歳の時からですか。毎年受けていて未だ受かってない実力とか運の無さとか36回も受けようとする執念とか余程暇じゃないとできないですけど凄いですね~」

無邪気な声でいかにも悪気無しな感じで(実際は70%悪意・30%本気で)言う。

「そ、そうかい・・・?」

トンパの顔が引き攣り何とか笑顔を保っている状態になった。

コレでにっこり笑えて言い返してきたら腹黒認定してやるけど、こんな小物には無理か。

「ま、まぁ何か聞きたいことがあったら何時でも声掛けてくれて構わないから。オレの名前はトンパって言うんだ。

あ、そうだ。もしよかったらコレ飲みなよ」

それでも渡そうとする所には呆れを通り越して感心するよ。

「ありがとうございます」

鞄に仕舞うとトンパは残念そーな顔をしたが(誰が飲むかよ、オッサンの懐に入ってた下剤入ジュースなんか)、シロガネの唸り声に慌てて離れていった。

トンパが嫌いってことシロガネに伝わっちゃったんだね?まぁ、全く問題ないけど。

それにしても、徹夜したから眠い・・・・

キルアは来てる筈だけど、どんどん人多くなってるし捜す気になんないや。

試験始まってからでいっか。

 

 

──────♪~・・・──────

 

あ、シャルからメールだ。

 

、まだ帰ってこないの?』

 

だとッ?!

今着いたばっかだっつーのッ!!

メールに返信をした後、携帯をサイレントにして鳴らないようにする。

よし、寝るか。昨日寝てないしね。

シロガネに腰を降ろさせ、凭れ掛かる。

んー、相変わらずフカフカ♥

『っつー訳でシロガネ、よろしく』

試験始まる頃に起こしてくれたらいーから。

 

「ガルルルル・・・」

 

おやすみなさ~い・・・・

 

 

 

 

──────数時間後──────

 

試験が始まり、付いて来るように言われても夢から帰ってこない少年を、周りは嗤いながら通り過ぎて行っていた。

受験者達が全員去った時、背凭れとなっていた虎が寝ている少年の襟元を銜え上手い具合に自分の背に乗せた。

そして、そのまま受験者と同じように走り出た。

嗤っていた者達を熟睡した少年を乗せながら優雅に抜き去って行き、度肝を抜いたとか。

 

 

 

 

主人公、変な所で面倒臭がり。