天災は忘れる前にやってくる95


──────ドコンッ──────

 

おぉー、鼻にドンピシャ。痛そー・・・

ハンゾーが勢い良く吹っ飛び、うつ伏せに倒れる。

 

「って~、くそ!!

痛みと長いおしゃべりで少しは頭が回復してきたぞ」

「よっしゃぁー、ゴン!!いけ!!蹴りまくれ!!殺せ、殺すのだ!!」

「それじゃ負けだよレオリオ」

医者志望とは思えない発言だね。

 

「この対決はどっちが強いかじゃない、最後に「まいった」って言うか言わないかだもんね」

うーん、それにしてもゴン、回復早いなぁ・・・・やっぱ身体の作りが根本的に違うのかな?

「ワザと蹴られてやったわけだが」

「ウソつけー!!」

あ、涙出てる。かなり痛かったんだね。

 

「分かってねーぜお前。オレは忠告してるんじゃない、命令してるんだぜ。

オレの命令は分かり難かったか?もう少し分かり易く言ってやろう」

 

右腕の包帯から刃物を取り出す。

・・・・包帯部分より長いよね。折り畳まれてたのかな?

 

「脚を切り落とす。2度とつかない様に。

取り返しのつかない傷口を見ればお前も分かるだろう。だがその前に最後の頼みだ、「まいった」と言ってくれ」

 

くっ付いた後はもっと丈夫になるような綺麗な折り方するクセに、それ言う?(結局はこの時点で既に気に入ってたってコトだよね)

しかも命令から懇願になってるし。

 

 

「それは困る!!」

誰でも困るよねー。困らないのはなくなっても又生やせる様なナメック星人系かキメラアントぐらいだよな。

 

「足を切られちゃうのもイヤだ!でも降参するのもイヤだ!!

だからもっと別の方法で戦おう!」

 

ゴンの言葉に会場の空気が変わる。

あー、流石ジンの子だなぁ・・・・・突拍子のない所とか、一瞬で雰囲気を変える所とか、親子だねぇ。

でも、普通は環境的要因で似るもんだよな?しかし、ゴンとジンは一緒に暮らしてない。

・・・・・・遺伝子レベルかッ!!組み込まれているのかッ!?

 

 

ゴンのマイペース振りへの困惑、上手く思い通りにならない苛立ちにハンゾーは切っ先をゴンに向けた。

「死んだら次もクソもねーんだぜ。方やオレはお前を殺しても又来年チャレンジすれば言いだけの話だ。

オレとお前は対等じゃねーんだ!!」

でも、拷問しても言わなかったゴンを殺してしまって失格になるより、次に賭けた方が手っ取り早いのは確かだよね。(もっとえげつない拷問をするとか薬を使うとかもあるけど)

それこそ、ヒソカやギタラクルはムリでも(キルアも拷問慣れてるからムリか)、ポックル・ボドロ・レオリオ辺りは耐えれなさそーだし。

 

「命より意地が大切だってのか?!そんな事でクタバって本当に満足か?!」

『意地』や『個人』より『命令』や『任務』を優先させなければならない忍にとって、それは理想論に近いだろうね。

 

「親父に会いに行くんだ」

真っ直ぐにハンゾーを見つめるゴン。

 

「親父はハンターをしている。今はすごく遠い処にいるけど、いつか会えると信じている」

・・・・・・・あんま離れた処じゃなかったよね?(港で様子窺ってたし)

「でも、

もしオレがココで諦めたら一生会えない気がする。

 

 

だから退かない」

 

・・・・・・そこまで憧れる様な人じゃない気がするんだけどなー。

 

「退かなきゃ・・・・・・死ぬんだぜ?」

ゴンの眼力凄いよね。クロロとは違った強さがある。

 

「・・・・・・・・・・まいった、オレの負けだ」

ゴンのウルウルおめめ真っ直ぐな目に負け、ハンゾーが退く。

あっさりとした終わりにゴンだけでなく、レオリオもクラピカも呆然としていた。

「オレにはお前は殺せねぇ。かといってお前に「まいった」と言わせる術も思い浮かばねぇ。

オレは負け上がりで次にかける」

ほぅ?では、ボクには勝てる自信があると?

ハンゾーのクセに生意気な・・・・・

ゴンの純粋で穢れのない瞳にノックアウトしたクセに!!

真っ直ぐでキルアを魅了してやまないってかヒソカさえも魅了してる感が否めないゴンの瞳に負けたクセに!!

 

 

「アホかぁーッッ!!」

あ、ゴンが飛んだ。

 

「おい審判、オレの負けだ」

 

 

 

「ねぇ、なんでワザと負けたの?」

キルアがハンゾーに質問する。

「・・・・わざと?」

「殺さずに『まいった』と言わせる方法なら心得てるはずだろ、アンタならさ」

「確かにー。止血方法も知ってるだろうし増血剤ぐらいなら持ってそーだから、仮にホントに脚を切ってても殺さずにできただろーね」

未来を潰したってコトで周り(主にヒソカ)が怖いけど。

「おまッ、なんちゅー恐ろしいコトを・・・」

レオリオが顔を顰めている。

でも忍者だよ?してもおかしくない職種なんだよ?

「・・・・・オレは誰かを拷問する時は一生恨まれる事を覚悟してやる。その方が確実だし気も楽だ」

「?」

キルアがよく分からんって顔してる。まぁキルアにとって拷問は修行の一環だしするコトもされるコトも慣れてるからだろうけど。

「どんなヤツでも痛めつけられた相手を見る眼には負の光が宿るもんだ」

そら痛いのヤだもん。自分だったら心の底から憎んじゃう。

「でもゴンにはそれがなかった」

一種の才能だよね。

「気に入っちまったんだアイツが。あえて敗因を挙げるならそんなトコだ」

キルアも知ってるじゃん?ゴンの眼力の威力を。

 

 

 

 

ゴン対ハンゾー終了。