天災は忘れる前にやってくる114


流星街は違う大陸にあるらしく飛行船の移動となる。

飛行船にはいい思い出がない(寧ろ迷惑しか被ってない)のでできるならあまり乗りたくなかったが他の交通手段となると一ヶ月掛かるらしく選択肢がなかった。シャルに乗客リストをハッキングして出して貰い知ってる名前がないか確かめた後、渋々乗り込んだ。

自分達の部屋から一歩も出ずにコソコソと過ごしていたお陰か誰とも会わずに目的の空港まで着く事ができた。

 

 

「何のイベントもなく着けたのはいいけど、狭い所にずっといたから肩凝った~」

「何言ってるのさ、シロガネかオレ達に凭れ掛かりながら読書するか寝るかで仮宿アジトにいた頃と殆ど変わらない生活してたじゃんか」

・・・・・・・・あれ、ホントだ?

「・・・・気分的な問題だよ」

「大体、周りなんか気にする必要ないのに」

「もしまた陰険眼鏡にあったらウザいじゃん」

「あんなのオレ達が次こそこの世から存在を抹消してあげるのに」

・・・・・アレに関してはそれでもいいなぁ、と思ってしまう自分がいる。でも、パール、だっけ?あの弟子がかなり逆恨みで復讐に来そうだよね。

「・・・・・関わり合い自体を持ちたくないし持って欲しくないんだよ」

「はいはい(いつか内緒で殺りに行こ)」

 

あー、でも美味しいご飯が食べれなかったのは悲しかったな。ルームサービス充実してなかったんだよね・・・・・

美味しいご飯といえば・・・

「そーいえばさー、ハンター試験の時に美食ハンターの人と知り合いになってね、その人がやってるお店教えて貰った」

「ふーん、料理上手いの?」

「美味しかったよ。料理に関する功績を認められて一ツ星シングル貰うぐらいだし

貰った名刺を見せながら美味しさを伝えていく。

「それは凄いな。今度行ってみるか」

メンチさんの料理はホントに美味しかったんだよね、楽しみ~。

 

 

 

 

飛行船を降りてからは列車に乗ったり走ったり(もちろんシロガネが)している内に着いた。

「アレが、流星街?」

「そう、オレ達が育った場所だよ」

何を捨てても許される場所、物でも、人間でも・・・・・・

、嫌なら止めるか?」

凄く今更な質問だね。

「嫌だったら始めから言ってるよ」

「・・・・そうだな」

「んじゃ、行こっか」

 

 

 

 

大きな壁を越えると、そこにはゴミの草原が広がっていた。

「・・・・・凄い」

「オレ達の本拠地ホームはもっと奥だよ」

「向こうの方に見える建物?」

奥に建物の影が見える。

「アレより更に奥だよ、そこまで行けば臭いもかなりマシになるから」

「今すぐ行こう」

実は今ココにいるだけでも結構辛い。有毒ガスは中和剤を飲んでいるから大丈夫だが、臭いは・・・

「人間の鼻はすぐに鈍感になるからある程度したら臭いも気にならなくなるがな」

「それまで待ってらんない」

「はいはい」

シャルもクロロもクスクス笑いながら歩き出した。

だって、口で息してても鼻が曲がりそうなんだもん。

 

 

 

「クロロ達はいつから一緒にいるの?」

「オレは物心つく頃には既に皆と一緒だったよ」

流星街ココでは子どもが少ない」

「生き残れないってコト?」

「それもある。捨てられた時に死んだり有毒ガスで死亡する事が殆どだ」

「次に餓死だね。赤ん坊で捨てられた場合は誰かに頼らなければ生きていけないから」

・・・・・そ、うだよね。赤ちゃんも、捨てられるんだよね・・・・・

「拾っていく大人もいるが大半はマフィアに売る為だ」

人身売買、ね・・・・・

「自分達で動ける年齢であっても食べれる物が少ない」

「自分の身を守り大人と争いながら食べれる物を手に入れるってゆーのはかなり大変なんだよね」

「・・・・・・・・・・・・」

軽く言っているが本当はいつも死が隣り合わせだったのだろう。

「だから、自然と子ども同士で集まっていく。自分達が、生き残る為に」

「奪わなきゃ生き残れない、殺さなきゃ殺される」

「俺達は奪う事も殺す事も日常的だった」

「教育も受けてないし教えるヤツもいなかったからそれが当たり前だった」

「だからお前が殺すのを嫌がるコトが真には理解できない」

 

頬に何かが伝う感触がした。

 

「・・・・・、泣いてるの?」

シャルに言われてからそれが自分の涙だというコトに気が付く。

 

「わたし、は・・・・ ・本当に平和な所に生まれて、食事にも困らない場所で育って、人殺しはダメだって教育を受けれる環境にいた・・・」

ココに来て改めて実感する、本当に恵まれていたという事に。

「だから、皆が生きてきた環境は聞いてこうやって来ていても想像の域から脱しない・・・・」

「だろうな」

「人殺しは嫌だ。でも、クロロやシャル、パクやフィンやクモの皆に会えて良かったと思うし、生きていてくれて嬉しい・・・・」

たとえ、人を殺さないと生きていけなかった環境でも・・・・

「私は、自分の生活を当たり前と思っていたから、私の世界にも戦争や貧困があってやっぱり生活するのに苦労している人達はいたけど他人事でしか考えなかった人間だから、言える立場じゃない。

でも、それでも・・・・・・

人殺しはして欲しくないし、人を傷付けて欲しくない・・・・・・」

「うん・・・・・」

「皆に傷付けて欲しくない、傷付いて欲しくない。ずっと生きてて欲しい・・・・・」

「人はいつか死ぬ」

「分かってる。でも、それは寿命とかそんなので、誰かに恨まれてとかであって欲しくない・・・・」

「そうか・・・・」

「皆にとって、死は身近な物で、死ぬのは怖くないのかもしれない。誰かに殺されてもしょうがないって思ってるんだろうね・・・・」

「あぁ」

「皆の生き方を否定はしない、できない。それは皆の存在を否定する事になるから。

でも、思ってしまう、あまり人殺しをして欲しくない、傷付けて欲しくない、誰かに恨まれて欲しくない・・・・・」

「それは・・・・」「できないな」

「そうだね・・・・でも、望んでしまう・・・・・ホントは私が人の死にも殺しにも慣れなければいけなかったのにね・・・・・

皆が、遠ざけてくれたから慣れなかった」

皆が、見せない様に、目の前では殺さない様にしてくれたから・・・・・・

は別に慣れる必要ないよ、慣れなくていい」

「・・・・・そうやって皆が甘やかしてくれるから、望んじゃうんだよ?」

「望んでいればいい、それは自由だ。俺達は変わる気はないが、もしかしたら気まぐれで望みを叶える時もあるかもしれない」

暗に、このままでいいと言ってくれる。

「・・・・・そうだね、望むのは自由だよね?」

「あぁ」

「分かった。望み続けるよ・・・・・」

 

 

 

 

珍しくシリアスな話でした。
いやー、疲れた・・・・(シリアスは慣れないね)