天災は忘れる前にやってくる153


「でも、は旅団がどんなコトをしたか知ってるんでしょ?!なんでそれでも一緒にいるの?」

納得できないとゴンが訴えてくる。

「理由の一つとしては私の前で彼等が人殺しをするコトが少ないからかな。彼等の仕事についていく事が少ないからというのもあるけど、私の目の前で人を殺すことは少ないから」

「目の前で人殺しをしていなかったらどれほど殺していても構わないというのかッ?!」

「そこまでは言わないし、私自身は人殺しはしたくないしして欲しくないと思っている。

けれど、正義の味方でも聖人君子でもないから『人殺しはいけない』『物を奪うのは良くない』なんて、言う気はないし、私の立場からは言えないし言いたくないよ」

「何で?旅団が怖いから?」

ゴンが真っ直ぐな瞳で見つめてきた。

「じゃあゴン、逆になんで人殺しはダメだと思う?」

「そんなの、世間の常識・社会の最低限のルールであって当たり前な事だろッ!!」

ありがとうレオリオ、その言葉を言ってくれて。

「世間の常識、社会のルール、ね・・・・確かにそれは間違っていないと思うよ。

でもじゃあ、『社会に認められていない者』がソレを守らないといけないの?」

「どういう意味だ?!」

「“流星街”」

「「「「「ッ!?」」」」」

一応全員知っているみたいだね。

「何を捨てても許される場所。ゴミも、死体も、人でさえも捨てられる事が許されている。

捨てられているのだから当然身分証などない、社会的に存在していないんだよ。それで、社会に存在を認められてないのに『社会のルール』を護る必要があるの?」

「それは・・・・」

「・・・・でも、でもッ、だからって人殺しをしてもいいのッ!?何をしても許されるのッ!?」

「法律上は是だね。存在しないんだから裁く事ができない」

「そうじゃないッ、そうじゃなくてッ、はそれでいいのッ?!」

私の答えにゴンが首を振って否定する。

「・・・・だから言ったでしょ、『言える立場じゃない』って。

私は確かにクモに飼われているけど、もし彼等に見つけられた時にそのまま放っておかれたら生きて行ける可能性は低かった。結果的には助けて貰ったと言っても等しいし、その後も面倒をみて貰っていた。

それなのに彼等に『人殺しはいけない』『物を奪うのは良くない』って言うのは彼等に対する裏切りみたいなモノだもん」

「何でそれが裏切りになるんだよ?」

キルアが眉を顰めて疑問を口にした。

キルアにとって人殺しは“仕事”であって“生き抜く手段”ではないからまた違うんだよ。

「だって、人から食べ物を奪わなきゃ、時には人と殺し合わなきゃ生き続ける事ができないぐらいの所に住んでいたのに、それを言ったら、彼等は生きるなって言われてるのと同義なんだよ?

だから私は言えないし言いたない。彼等の今までの人生を否定するなんて、存在を否定するなんてできない」

全員が言葉もなく佇む。

「・・・・クラピカ、彼女『嘘は言ってないけどまだ隠し事がある』って音がしてるわ。それに、何かに怯えてる・・・・」

勝手に人の内心暴露しないで欲しいなぁ、クラピカまた構えちゃったじゃん。

「人の内心暴露しないで下さいよー」

「ごめんなさい、でも貴女が旅団もクラピカ達も大事に思ってるのにどうしてこんな事するのかと思って・・・・」

「大事に思ってるヤツを脅すかよ・・・」

「しょうがないじゃん、キルア達は好きだけどクロロ達の方が私にとって優先順位が上なんだもん。

言ったでしょ、『敵になるのは自分と大切に思ってる人達を狙う者』って」

「旅団のヤツ等が『大切な人達』なの・・・・?」

「そうだよ」

「・・・・人間扱いされてないのに?」

「じゃあ聞くけど、ペットは皆嫌々飼われてるの?いつも逃げ出したがっている?飼い主のコトが嫌い?」

「それは・・・」

「ゴン納得しかけるな!!飼われる相手は幻影旅団だぞ?!」

レオリオ五月蝿い。

「旅団に飼われているのは事実だよ、団長が命令し団員が了承したから。

だからって手荒に扱われたと思う?自由もなく檻に入れられていた?鎖で繋がれていた?枷を付けられていた?

否、無理矢理拘束されたコトはないし、行動を制限されたコトも少ない。天空闘技場もハンター試験も自分で行くって決めたし自由にさせてくれたよ。

今だってそう、出てくる時に命令して行かせようとしたり止めようとした人いた?いなかったよね。

私は団長命令のみ服従だけど力関係を考えたら他のメンバーも言うコト聞かせるのは簡単、でも彼等が命令してくるコトは殆どない。私の意見を尊重してくれる。

彼等が私にさせようとした事は強くなる事。

絡まれても対処できるように、自分の身を護れるように、強い相手でも逃げれるように、逃げ切れなくても彼等が来るまで持ち堪えていれるように、死なないように・・・・

生きる術も居場所も好意もくれてるのに、どうして嫌わないといけない?好きになっちゃいけないの?」

「人を人と思っていない、簡単に殺しをするヤツ等だぞ!?俺の一族皆殺しにしたッ、自分達の命さえどうにも思わないッ、そんなヤツ等を何故大切にできるッ?!」

「大切に思う事に理由がいるの?理由がないと大切に思っちゃダメなの?」

「ッッ」

「まぁ、理由としては“一緒に過ごしてきて彼等を知ってるから”かな?」

クラピカが自分の中で葛藤していて言葉にできないのが良く分かる表情をしている。









旅団が空気・・・(笑)