天災は忘れる前にやってくる154


「・・・・じゃあ、何ではクラピカを見るのがそんなに苦しそうなの?」

クラピカを見ていて自分の感情が駄々漏れだったらしい、ゴンに突っ込まれた。

苦しそう、ね・・・・・・

「クラピカの気持ちも分からなくもないからだよ」

「ッッ、復讐を選ぶ気持ちを分かりたくはないと言っていたではないかッ!!」

ウボォーギンの時ぜんかいと違う意見にクラピカが声を荒げる。

「“復讐を選ぶ”ってコトは“大切な人を殺される”ってコトでしょ?それは嫌、だから前に言った『復讐の道を選ぶ気持ちを分かりたくない』って言葉じゃホント。

でも、もし家族が殺されたと考えたら、許せないと思うし、復讐したいと考えるとも思う。

実際に復讐をできるだけの力をつけたクラピカは凄いとも思う。でもね、だからこそクラピカには人殺しをして欲しくない」

「矛盾してないか、それ」

「でもさキルア、これが私の本音なんだよ。
クモの皆は大切だと思っているけど、育った環境や生き方・根底の考え方が違い過ぎるから、芯から分かり合うのは難しいけど、クラピカは家族に愛されて育ったでしょ?
部族っていうある意味特殊な環境だったかもしれないけど、社会の中で育ってきて『人殺しはいけない』っていう教育を受けてきたでしょ?
そーゆーコトでは一緒だからクラピカの考え方は理解し易いんだよ」

自分は何時殺されてもいい、自分の死を何とも思わないからこそ他人を殺しても何とも思わない、という考え方よりかは、ね・・・・・・・



「でもね、

だからこそ言いたかった、


聞きたかった事がある・・・・・


ずっとずっと聞きたかった・・・・」



それは、知識はあったしっていた頃から聞きたかった事。クラピカを実際に知って、尚更聞きたかった事・・・・・



「クルタ族である事を誇りに思っているクラピカ。

復讐を選び成し遂げようとするぐらい、部族の人達が好きで誇りに思ってるんだよね・・・



でもさ、


そこまでクラピカが誇りに思える人達が、


好きでいる人達は・・・・・


一人生き残った部族の子どもに・・・・


復讐を望むような、人達なの?





「ッッ?!」





「辛い思いをしている子どもに、もっと辛い思いをする事をさせようとするような「黙れ黙れ黙れッッ!!」・・・人達、なの?」


声を張り上げて私の言葉を止めようとするクラピカ、でもその表情は怒りより恐れの方が勝っている。


「お前に何が分かるッッ?!俺のッッ、殺された仲間のッッ、何が分かるというんだッッ!!」


「・・・殺された人達が本当はどう思うのは分からない。

けれど、もし、自分が殺されて、家族が一人残されたとしても、復讐なんてして欲しくないから・・・

そんな道を選んで欲しくないから・・・・・幸せになって欲しいから・・・・・

私を愛してくれているのを分かっていて、私も愛しているから、尚更そんな事望みたくない・・・・・・そんな辛い事をさせたくないんだよ」

「ッ、じゃあどうしろと言うんだッ?!復讐の為にここまで生きてきたッッ!!それを今更止めろというのかッッ!!俺の歩んできた道をムダだとッ、否定するのかッッ?!」

「・・・・復讐だろうが何だろうが生きてきた人の人生を否定しようとは思わない。でも、“復讐”を止める意味はあると思うし、まだ“今更”ではないと思う」

「ここまで来て、どうして今更ではないと言えるッ!?俺はそれだけの為に生きてきたし、ヤツ等を捕まえ殺せるだけの力も手に入れたッ!!」

「でも、殺していないよね」

「ッッ?!」

「クモの誰も、クラピカに殺されたものはいない。始めに捕らえたウボォーギンも生きているし、後ろの二人も死んではいない」

「おい、旅団の一人はクラピカが殺したんじゃなのかよ?」

キルアがクラピカにおずおずと確認を取るが、クラピカは力なく首を横に振って答えた。

「ッ、ウボォーギンが、生きてるの・・・・?」

それを見て、今まで一度も口を挟まなかったパクノダが思わずと言った形でウボォーギンの安否を口にした。

「生きてるよ、今は旅団の皆と接触も連絡も取れないけど、無事だよ」

ッッ・・・・

パクの目に涙が浮かんだ。クロロは喜びを露にしていないが目を少し見開いて意外だという表情をした。

「クラピカの手はまだ誰も殺していない、綺麗なままだから、引き返す事ができる、引き換えしても迎えてくれる仲間がいる」

クラピカの瞳が、緋の目の緋色が揺れる。

「・・・・仲間は、もう死んだ。俺に仲間は「周りにいる人達は違うの?」ッッ・・・」

本当は気付いているでしょ、クラピカ?

「ここでクラピカの為に動いている人達は違うの?仲間じゃないの?見殺しにできる程、大切じゃない?」

「大切な仲間だッ!!でもッ、だけどッ・・・・」

すぐに否定の言葉が出るが、もう一つの思いも捨てきれずに苦しんでいる。

「・・・・前に別れる時、尋ねたよね?『仲間と復讐、どちらを取る』って。

クラピカは、なんて答えた?」





「・・・・・・・・・・・・」

目を大きく見開いて、クラピカの動きが止まった。





「・・・・・・・・・・仲間だ」



「この場で優先するべきは、どっち?」

ゴンを、キルアを、捕らえられたレオリオを見て、捕まえているクロロ、パクノダ、私を見て、





「・・・・・・・仲間、だ・・・・」



子どもが泣きそうな表情をしながらも、



「・・・・・じゃあ、私と取引に応じてくれる?」



「・・・・・・あぁ」



答えを出した。









クラピカへの投げ掛けは、一番やりたかった場面でした。
コレがしたくてハンター夢を始めました。
長かった・・・・(笑)