忍びの学び舎此処に在り 4


「この忍術学園の事は来る前に少し話をしたと思うが、今日からお前達には此処で学ぶ事となった。
『やっぱり、そうなるんだ』『まぁ、話が出た時点で予想は付いていたけど』
授業料はある程度払ってあるし生活費も幾分か渡してあるな。連絡を取れるようにしておくから何かあればすぐに言いなさい。
『頼るより稼いだ方が早いじゃん』『頼ると里のヤツ等も五月蝿いし』
…自分達で稼いでもよいが、上級生になるまで難易度の高い忍務で稼ぐ事を禁ずる。
『『えー、手っ取り早くて楽なのに』』
ここの学園長は儂の古くからの友人で信用できる人物であり、先生方も優秀な者が揃ってると聞いておる。頼る事も一つの手段と思いなさい。
『ヒモになれって?』『寧ろ援交?』『それ違うくない?』『どっちもあんま意味変わらねぇだろ』
……儂は…お前達を拾ったのに、子どもでいさせてやる事も、護ってやる事もできなかった…」
『…あれ、空気重くなった』『え、何で?』
話の流れが変わり、声を絞り出すように話す森羅。
『なんか後悔してますって顔してるぜ?』『何を?』『さぁ?』
「里の者から守る事も儘ならず、酷な仕事もさせてしまった…」
『酷な仕事?』『稚児趣味のエロ爺の閨に行けってヤツ?変態婆に調教されに行けってヤツ?』
そんな森羅に少し戸惑いを見せる子ども達。
『どっちも暗殺忍務だったしアレ万爺知らないだろ?』『うーん?』
「…せめて此処では、護られながら学び、遊び、成長していくと良い…
『結局、何を望んでるの?』『子どもらしく遊んで過ごせってコトじゃねぇ?』
保護者らしい事は何一つできなかったが、儂はお前達を大切だと思っておる」
『子どもらしくって、ボク達子どもらしくないの?』『そうなんじゃね?』
項垂れている森羅を見て子ども達は2人顔を見合わせる。
『沈んでるなー』『暗殺の仕事やってたってバレた時以来だね』『面倒だけど仕方ない…』
2人は頷き合い面を外すと、とてもよく似た、と言うより全く同じ顔を顕わにすると、話し出した。

「孤児の私達に衣食住を与えて下さったのに」「何をそんなに後悔しているのですか?」
『食べ物も住む場所もあるって楽でいいよね‥』『なぁ』

「私達を拾い育てた事を後悔しt「違うッ!!そんな事露にも思っとらんッ!!」…その言葉だけで充分です」
『ここまで裏がない親切な大人っていなかったよね』『裏ありまくりか気まぐれか同情だったな』
「…儂はお前達にとって、頼れる存在でおれたか?」
『なんで里のヤツ等の陰険な嫌がらせを我慢してたと思ってるんだよ』
「傍に居たくなければ」「すぐに姿を消してます」
『我慢してると知らなくない?』『あ、そっか』
「…そうか」

子どもの言葉を聞き、驚きつつも表情を緩ませる森羅。

「「今まで、ありがとうございました」」

感謝の言葉と同時に二人一緒に頭を下げる。
『大盤振る舞いー』『一番世話になったからな』
「…此処での生活が、お前達にとって幸多い事を、祈っている。大川、こやつ等をよろしく頼む」

「うむ、この子達にとって良き理解者・頼れる存在になれるように、学園での生活が成長に繋がるように手助けをしていくつもりじゃ」
『“良き理解者”ねぇ…』『先生方の努力に乞うご期待、ってな』
「頼む。では二人共、元気でな。大川も、会えて嬉しかったぞ」
『もう会えないと考えていい?』『里に帰るなら会えないだろうな』
「あぁ。再び相まみえる事を楽しみにしておる」
『近付きたくないモンね』『そーゆーコト』






森羅が部屋から出て行くのを見送った後、改めて教師陣と子ども達は対面した。

「改めて、ワシはこの忍術学園で学園長をしておる大川平次渦正と言う、後ろにいるのは学園の先生方じゃ。お前さん達の事について少し森羅から聞いているから何かあればいつでも頼りなさい」
『“お金がないです”って言ったらくれるの?』
「「白檀「」「」です」」
「「これからお世話になります」」
『バイト紹介してくれるんじゃね?』『…それはある意味正しい手助けだね』
姿勢を正して行儀良く挨拶をする子ども達を見て、教師陣は感心すると共に子ども達の一線引いている様子に目を細める。

「…最初から信用するとは思ってはおらん。自分達で確かめて信用できる人物か、信頼するに値するかを見極めていくといい」
『…気付いた?』『へぇ?中々やるなこのジイさん』
「分かりました」「……頑張って見極めていきたいと思います」
『先生達も。流石忍者、審察眼は確かみたい』『その分気を抜けないけどな』
信用していないと肯定をしたような返事だが、全否定ではなく信用する可能性はあるという言い方に教師達が少し安心する姿があった。
『…鋭いクセに甘いの?』『よく分かんねぇ人達だな…』




「一つお聞きしますが、兄弟同じ部屋で寝起きするのは可能でしょうか?」
『あ、それ確かに聞きたい』『だろ?』
「うむ、部屋割は学年・組別になっておるからのぉ、同じ組になるのならば可能じゃ」
『よっし!!』
学園長の言葉に安堵の様子を見せる子ども達。初めての子どもらしい表情に教師陣もホッとする。
『よかったぁ…』
「どの組がよいかのぉ…」
『一緒ならどこでもいいや』
「学園長、是非は組に!!」「いえッろ組に!!」「いやいや成績優秀ない組に!!」
『自慢や貶しの言い合いになってるし』
「う、うーむ…」
『必死すぎて笑える…』
各組の担任が必死に自分の組を自慢する姿に学園長は少し引きながらも熟考する。
『できるならあまり関わり合いのない所がいいよな』『ねー』
「…よし、はは組とする!!」
『は組だって』
は組の担任達はガッツポーズを作り他の担任達は悔しそうに歯を食いしばっている。そんな中、子ども達は何の感情も浮かべずにそれらを見ていた。その様子を他学年の教師陣は少し心配気に見守っている。
『だな』
、編入である為少し戸惑う部分もあるかもしれんが、色々少しずつ学んでいけばよい」
『少しの間血生臭いコトとオサラバかな?』『暫く骨休めでもしとくか』
「…これからよろしくお願いします」
「(ペコリ)」

学園長の言葉に、子ども達二人は同時に頭を下げた。







見事に爺's以外出てきませんでしたねぇ……(つ、次こそはッ)

さてさて、お気付きの方はいらっしゃったでしょうか?
もし気付いてなかった場合は、反転してもう一度1話目から読んで見ると面白いかもしれませんよ?(笑)


そして読まれた方、お疲れ様です(笑)
もし背景の絵がない事に気付き始めから反転付きで読まれていたと言う方がおられたら素晴らしい勘です♪
ちょー裏表がありそうな夢主達ですが、裏設定もてんこ盛りにする気満々♪既に盛沢山ですけど・・・
因みに、彼等が話している『』は矢羽音ではなくテレパシーとかそーゆー系。(双子の神秘、みたいな?)
あれだけ話していたら、矢羽音でもバレバレになってしまいますからね。(笑)