初顔合わせ 1


二年は組の教室に向かう廊下を三年生が二人歩いていた。

「こんな時期に編入生が二人もって珍しいよね」

「その分用具と保健おれたちの所に入ってくるんだからいいじゃねーか」

「本当にね。去年は入らなかったし今年の子は二週間も経たずに辞めちゃうし…」

「俺の所なんか去年も一昨年も一週間しないうちに来なくなったぞ」

「まぁ、行儀見習いで委員会活動もやる気のない子達だったけどね…」

話している内に二年は組の教室に着く。

中を覗いてキョロキョロ見回すが誰が目当ての人物か分からなかった。

「留さん、入った子の名前分かる?」

「確かびゃくだん…だったと思う」

「えッ、僕の所もびゃくだんって子だったよ?!」

「「……あれ?」」

疑問が生じながらも近くにいた後輩に呼んでくる様に頼むと、尋ねた後輩は首を傾げそんな名前の者はいないと答えた。

「「……どーゆー事?」」

顔を見合わせて訳が分からないとゆー顔をする。

もう一度確かめる為に今度は違う後輩に尋ねてみる。

その者は一つ上の先輩達が何の用だとを怪訝そうにしていたが、委員会で迎えに来た事を伝えると頷き呼びに行ってくれた。

二人はびゃくだんと言う者が存在していた事にホッと息をつく。

「よかった…」「いるんだね…」

呼びに行った後輩を目で追い掛けていると教室の端にいた二人組に声を掛けており、こちらを指差して説明している。

話が終わると呼びに行った後輩は二人に手を振って別れ、二人組みはこちらに向かってきた。

「「何かご用ですか?」」
『色が違うな』『萌黄だから…三年、だっけ?』

入り口の前まで来て異口同音で声を発する二人の少年達は顔も背丈も髪型も全てが瓜二つだった。

「ド、ドッペルゲンガーッ?!」
『何コイツ等?』『さぁ?』

「伊作、時代背景考えろ。しっかしそっくりだなぁ…お前等双子か?」

「「………だとしたら?」」

「双子ってホントよく似てるんだなぁ」

「ねー、すごいねー」

「「…………」」
『…何コイツ等?』『…さぁ?』

心の底から感心した様子の三年生にどう反応すればいいのか分からず二年生は途方にくれていた。

「で、白檀はどっちだ?」
『ボクの名前知ってるし…』

「…はい」

「じゃあ白檀は君だね」
『オレもかよ…』

「…はい」

「俺は三年は組の食満留三郎だ。の委員会の先輩になる」

「僕は三年は組の善法寺伊作、の委員会の先輩だよ。今から委員会活動だから迎えにきたんだ」
『呼び捨てかよ』『しかも名前』

「…委員会」「…活動?」
『何それ?』『こないだ先生がなんか言ってたヤツじゃねぇ?』

「そうだ、俺とは用具委員会、伊作とは保健委員会だ」
『あぁ、あれか』

「先輩達も紹介するから、行こう!」
『……で?』『何この手……?』

自分達が差し出した手を凝視したまま固まってしまった後輩達に二人は首を傾げる。

それでも先輩達を待たせているのを思い出し、そのまま後輩の手を取り歩き出す。

『…………なんで?』『…………こうなるの?』

「先輩達は皆優しい方ばかりだからすぐに慣れるよ」

「分からない事があれば頼ればいい。勿論、俺達でも構わないからな!!」
『まず繋ぐ意味が分かりません』

「……手」

「ん?あぁ、迷子になったり、罠に嵌ったら大変だろ」
『そんな間抜けじゃないし』

「……名前」

「僕達の委員会では殆ど皆名前呼びだよ。だからも僕の事名前で呼んでね」「俺達の所もだ」
『え、マジ?』『そーなの?』

「「(後で先輩達と口裏合わせよう)」」
『とめさぶろうって長い…』『とめ先輩にしたらいいんじゃね?』『それ採用』

単に今の先輩達が偶々名前で呼び合ってるだけでそんな決まりはないのだが、さも事実の如く話した。

「…いさく先輩?」「……とめ先輩?」

「「──────ッッ!!///」」
『あ、しゃがみ込んだ』『体調悪いのか?』

同じタイミングで同じ様に自分達の顔を見上げながら首を傾げて名前を呼ぶ姿は凄絶に可愛らしく、三年生二人は瞬時に心の臓を打ち抜かれ悶え苦しんだ。(それでも手を離しはしなかったが)

そしてしゃがみ込んだままコソコソ話し合う。
『次はなんだ?』『この先輩達の動き面白いねー』

「想像以上の破壊力だね…」「先輩達が下を構う訳がよく分かったな…」
「でもこの可愛さはヤバい…」「確かに、コイツ等は俺等で守らないと!」
「でも僕達だけだと上級生相手は厳しいよ…」「…悔しいけど、先輩にも協力を頼もう」
「なら尚更早く行って先輩達にお願いしないと」「よし、じゃあ行くか」
「気を付けてね」「伊作こそ罠に引っ掛かるなよ」「が、頑張る」

『あ?!』『え?!』

決意した三年生はスクッと立ち上がると自分達の委員会場所へ向かうべく共に別れを告げて後輩の手をしっかり握り駆け出した。

『えー別々ー?』『一緒に迎えに来るなら一緒の所でしたらいいのに…』『なー』







兄が保健で弟用具。
どちらも後輩は入ってすぐに辞めたらしい。
色付きは彼等のテレパシー会話部分。緑が兄の青が弟の